関内駅を降りたら、旧市庁舎の前にバル街ができていた
JR関内駅の北口を出る。横断歩道を渡って30秒も歩けば、見慣れたはずの旧横浜市庁舎が目に入る。だが2026年3月、その景色が一変した。建物の足元に、小さな飲食店がずらりと並んでいる。看板の灯り、漂う焼き物の香り、テラス席でグラスを傾ける人たち。ここはいつから、こんな場所になったのか。
「BASEGATE横浜関内」。旧横浜市庁舎行政棟を保存・活用した複合施設が、2026年3月に開業した。住所は横浜市中区港町1-1-1。JR関内駅から徒歩1分、みなとみらい線日本大通り駅から徒歩7分。横浜スタジアムのすぐ隣だ。
コンセプトは「新旧融合」。行政の中心だった建物が、食とエンタメとホテルの複合拠点に変わった。再開発の常套句のようにも聞こえるが、実際に足を運ぶと、その言葉の意味が体感としてわかる。昭和の官庁建築の重厚な外観と、路地裏のような飲食エリアのコントラスト。横浜らしいと言えば、これほど横浜らしい場所はない。
開港以来160年、この街はずっと「異質なもの」を受け入れて混ぜてきた。中華街、元町、山手の洋館。関内という土地に、また新しいレイヤーが重なった。
横浜にまた食スポット?——いや、これは性質が違う
正直に言って、「横浜に新しい商業施設ができました」と聞いて、食指が動く人は少ないかもしれない。みなとみらいにも中華街にも赤レンガにも、飲食店は腐るほどある。もう十分だろう、と。
その感覚は正しい。大型モールのフードコートがもう一つ増えたところで、横浜の食の景色は変わらない。だが、BASEGATEは商業施設というより「飲み歩きの街」に近い。ショッピングモールのテナントではなく、34区画の小さな独立店舗が路地裏のように連なっている。それぞれの店に個性があり、カウンターがあり、店主がいる。
この設計思想が決定的に違う。フードコートで完結させるのではなく、「ハシゴ」を前提にしている。1軒目でピンチョスをつまみ、2軒目でクラフトビールを飲み、3軒目でコーヒーで締める。そんな使い方を、最初から想定して作られた場所だ。
思い出してほしい。東京の横丁ブーム——恵比寿横丁、渋谷横丁、有楽町の産直横丁。小さな店が密集し、ハシゴを楽しむ飲食空間が都市部で支持されてきた。BASEGATEは、その横丁カルチャーを横浜の歴史的建造物の中に持ち込んだ。それだけで、行く価値がある。
34店が路地裏のように並ぶ。ハシゴ前提の食空間
BASEGATEの食の中核を担うのが「スタジアム横バル街」だ。「スタジアムサイドテラス」と「ザ レガシー」の2棟で構成され、合計34区画の小型店舗が集まる。
店の顔ぶれが面白い。スペインバル仕込みのピンチョス&タパスの店。具材を選んで焼いてもらう「旅するトーストサンド」。鮮やかなBLUE色のコーヒーを出すカフェ。横浜中華街の流れを汲む点心の店もあれば、三浦半島の地魚を握る寿司カウンターもある。ガッツリ系の肉バルからナチュラルワインの角打ちまで、振り幅が広い。
どの店も間口は小さい。カウンター5席にテーブル2卓、というような規模感。でも、だからこそ店主との距離が近く、会話が生まれる。大箱の飲食店にはない「人の温度」がある。
注目したいのが、開業記念イベント「乾杯!ハシゴ札」だ。4月1日から5日まで開催され、複数店舗を回遊する仕掛けが用意されている。最初から「1軒で完結しない体験」を打ち出しているのが潔い。
テラス席からは横浜スタジアムが見える。試合がある日は、歓声がバル街まで届く。ビール片手にピンチョスをつまみながら、遠くから聞こえる歓声に耳を澄ます。そんな体験が、関内駅から徒歩1分で手に入るようになった。
34の小さな店が路地裏のように並ぶ。フードコートではなく「バル街」。1軒で完結しない食体験が、この場所の設計思想だ。
球場のない球場メシと、村野藤吾のホテル
BASEGATEの魅力は食だけではない。「THE LIVE」という施設が、このエリアにもう一つの文脈を加えている。
横浜DeNAベイスターズが手がける日本最大級の常設型ライブビューイングアリーナだ。巨大スクリーンでスポーツ中継を観ながら飲食を楽しめる。つまり「球場に行かなくても、球場メシの空気感を味わえる」場所。球場グルメの進化が、ついにスタジアムの外にまで広がった。
試合のない日もライブイベントや映画上映などに使われる。食×エンタメの融合拠点として、バル街との相乗効果が狙える設計になっている。ベイスターズの試合をTHE LIVEで観て、そのままバル街で祝杯を上げる——そんな動線が自然にできあがる。
さらに、2026年4月21日には「OMO7横浜 by 星野リゾート」が同じ敷地内で開業する。旧市庁舎の本庁舎部分をホテルに転用した施設で、設計は昭和を代表する建築家・村野藤吾。1959年に竣工した建物の外観をそのまま活かし、内部をホテルとして再生する。コンセプトは「気分上々、ハマイズム」。
歴史的建造物に泊まり、朝はバル街でコーヒーを飲み、昼はみなとみらいを散歩して、夜はTHE LIVEでベイスターズを応援してからバル街でハシゴ酒。1日で完結する「横浜・関内」の新しい過ごし方が、ここで初めて可能になる。
関内に行く理由が、また一つ増えた
横浜は不思議な街だ。開港から160年以上、この港町はずっと「外から来たもの」を受け入れて、自分のものにしてきた。中華料理、洋食、ビール、ジャズ。どれも外来文化を横浜流にアレンジして、街の個性にしてきた。
その歴史を思えば、旧市庁舎が食の拠点に生まれ変わるのは、実に横浜らしい出来事だと思う。行政が去った建物に、34の小さな飲食店が入る。スポーツと食が交わるアリーナができる。昭和の名建築がホテルになる。一つひとつは珍しくないが、それが一つの場所に集まったとき、関内という街の意味が変わる。
野球を観に行く街だった関内が、食べに行く街になろうとしている。いや、正確に言えば「食べながら、歩きながら、飲みながら過ごす街」になろうとしている。
4月の開業記念期間に行ってもいい。ベイスターズの試合に合わせて行ってもいい。あるいは何の予定もない週末に、ふらっと関内駅で降りてみるのもいい。旧市庁舎の前に広がるバル街で、最初の一杯を何にするか。それだけ考えればいい。
関内に行く理由が、また一つ増えた。
施設情報
- 施設名
- BASEGATE横浜関内
- 住所
- 神奈川県横浜市中区港町1-1-1
- アクセス
- JR関内駅 徒歩1分 / みなとみらい線 日本大通り駅 徒歩7分
- 主な施設
- スタジアム横バル街(飲食34店舗)、THE LIVE(ライブビューイングアリーナ)、OMO7横浜 by 星野リゾート(2026年4月21日開業予定)
- 開業
- 2026年3月