4月、またスーパーの棚が静かに変わる
4月。新年度が始まるこの時期、スーパーの棚が静かに変わる。カップヌードルが248円になる。マヨネーズが10%上がる。ウイスキーの響や山崎も値上がりする。もう驚かなくなった自分がいる。
でも本当に怖いのは、値段が変わらず中身が減る「ステルス値上げ」かもしれない。袋を開けたら、なんだか以前より麺が少ない気がする。でもパッケージは同じだし、値段も変わっていない。気のせいだろうか——いや、気のせいではない。
帝国データバンクの調査によれば、2026年1〜4月で3,593品目が値上げされる。前年同期比では約4割減で、ペースは鈍化している。でも月1,000品目前後の値上げが「常態化」しているという現実は変わらない。
私たちの食卓は、いつの間にか毎月少しずつ変わっている。値札の数字だけでなく、袋の中身も、瓶の容量も。気づかないうちに、「当たり前」が書き換えられていく。
値上げラッシュは終わったのだろうか。それとも、これが新しい日常なのだろうか。
4月、何が上がるのか——そして私たちは何を思うか
具体的に見てみよう。2026年4月、何が値上がりするのか。
マヨネーズが6〜10%上がる。キユーピーも味の素も、ほぼ同じタイミングで。食用油は8〜20%。カップ麺、即席袋麺も軒並み値上げ。サントリーのウイスキー——響、山崎、白州といったプレミアム銘柄も、希少性を理由に価格改定。ヤッホーブルーイングのクラフトビール「よなよなエール」も、原材料高と物流費の上昇で価格を見直す。
「また値上げか」と思う。カートに入れながら、ため息が出る。家計簿を見れば、食費の欄がじわじわ膨らんでいる。節約しているつもりなのに、支出は減らない。
ネットには「値上げ一覧」が溢れている。でもそれを見ても、気分が重くなるだけだ。大事なのは一覧ではなく、なぜ上がるのか、そしてどう向き合うかだろう。
値上げの裏側には、何があるのだろうか。
なぜ値上がるのか——3つの構造
値上げの理由は、実はシンプルだ。帝国データバンクの調査によれば、値上げ要因の99.9%は「原材料高」。つまり、ほぼすべての値上げは、作るための材料が高くなったからだ。
大豆、菜種、鶏卵、小麦——これらの国際価格が上がっている。特に2024年以降、異常気象や地政学リスクで供給が不安定になり、価格は高止まりしている。日本は多くの食材を輸入に頼っているから、海の向こうの天候や政治が、そのまま私たちの食卓に響く。
次に多いのが「人件費」で、66.0%。これは過去最高の割合だ。最低賃金の引き上げ、物流ドライバー不足、2024年問題の余波——働く人の給料が上がるのは本来良いことだが、それがコストとして価格に転嫁される。
そして「包装資材」が81.3%。段ボール、プラスチックフィルム、紙パックといった包装材の価格が上がっている。原油高の影響もあるし、環境対応素材へのシフトでコストが増えているケースもある。
意外なのは、「円安」が理由の値上げは1.6%まで低下していることだ。一時期、「円安だから値上がる」と言われたが、今は違う。円安の影響はすでに織り込まれ、今の値上げの主役は原材料と人件費なのだ。

そしてもうひとつ、見逃せないのが「ステルス値上げ」だ。日清食品は即席袋麺の内容量を7〜17%削減し、価格は据え置いた。パッケージは変わらない。でも中身は減っている。消費者が気づきにくいから、企業としては合理的な選択かもしれない。でも、気づいた時のモヤモヤは残る。
値段が変わらないから安心していたら、実は1食あたりのコストは上がっている。これが今の値上げの、最も静かで、最も巧妙な形なのかもしれない。
逆に安くなるもの、賢い選び方
でも、すべてが上がるわけではない。値上げの波に乗らないもの、むしろ今が旬で安くて美味しいものもある。
春キャベツ、新玉ねぎ、たけのこ——旬の野菜は、値上げと無関係に安くて美味しい。春は特に、野菜が豊富で価格も安定している。スーパーで迷ったら、旬のコーナーを見るといい。
コメは高止まりしているが、ふるさと納税を使えば実質負担は減る。自己負担2,000円で、10kgや15kgの新米が届く。節約というより、賢い選択だ。
PB商品——セブンプレミアムやトップバリュといったプライベートブランドは、ナショナルブランドより値上げ幅が小さい傾向にある。企業が中間マージンを削って価格を抑えているからだ。
業務スーパーの冷凍食品も、価格据え置きのものが多い。大容量で買えば、1食あたりのコストはさらに下がる。冷凍庫に余裕があるなら、選択肢のひとつになるだろう。

値上げの裏側には、農家・漁師・工場・ドライバーの人件費がある。「高くなった」と嘆く前に、作っている人の手取りが増えたと考えてみる。
そして忘れてはいけないのは、値上げの裏側には人がいるということだ。農家、漁師、工場の従業員、配送ドライバー——彼らの人件費が上がったから、価格が上がっている面もある。「高くなった」と嘆く前に、作っている人の手取りが少しでも増えたのなら、それは悪いことではないかもしれない。
お取り寄せで生産者を直接応援する選択肢もある。スーパーで買うより高いかもしれないが、誰に払うかを自分で選べる。それも、ひとつの食べ方だ。
何に払うかを、自分で選ぼう
値上げは続く。それは間違いないだろう。でも、食べることをやめるわけにはいかない。だったら、何に払うかを自分で選ぼう。
値段だけで選ぶのではなく、「誰に払うか」を考える食べ方。旬の野菜を選ぶ。PB商品を試してみる。ふるさと納税を活用する。お取り寄せで生産者を応援する。そうやって、少しずつ自分の食卓を作っていく。
値上げは嫌だ。でも、値上げの裏側には、誰かの給料があり、誰かの暮らしがある。それを知ったうえで、自分なりの選び方をする。それが、今の時代の食べ方なのかもしれない。
4月、またスーパーの棚が変わる。でも、あなたの選び方は、あなたが決めていい。
値上げに振り回されるのではなく、自分で選ぶ。それが、食を少しだけ楽しくする、小さな一歩になるかもしれない。